東京都新宿区の国立競技場で19日に行われた全国高校サッカー選手権大会(読売新聞社など後援)の決勝で、京都橘は鵬翔(宮崎)と対戦、2度のリードを守りきれず、PKの末に敗れ、初の栄冠を逃した。
雪で順延された14日とは打って変わり、からりと晴れた青空の下、芝の上でチームカラーのエンジが躍動した。
京都橘は前半の立ち上がり、鵬翔の素早いパス回しに翻弄されたが、守備陣形をコンパクトに保ってしのぎ、小屋松と仙頭の2トップにボールを集めた。41分、ゴール前でボールを受けた林が右足で強烈なシュートを放つと、球は相手GKの手をはじいてゴールへ吸い込まれ、待望の先制点を生んだ。
後半は、開始直後にセットプレーから同点に追い付かれ、相手の厳しいマークに好機が見いだせないまま、苦しい展開が続いた。だが、仙頭、小屋松がコンビネーションで抜け出すと、最後は走り込んだ仙頭が押し込み、再び、勝ち越し。
頂点が見えたかに思えたが、終了間際にスピードに乗って切り込んでくる相手DFを倒して痛恨のPK。試合は振り出しに戻った。
延長戦でも一進一退の攻防が続き、最後はPKで、1人目の仙頭がゴールポストに嫌われ、あと一歩で涙をのんだ。
試合後、米沢一成監督は「結果は残念だったが、選手たちはよくやった。3年間、すてきなサッカーができたことに『ありがとう』と伝えた」と話していた。
◇「日本一のGKに」決意新た 永井建成選手2年
「4人目のPKはボールに触れたのに。1本止めたかった」
鵬翔に5人連続で決められ、初優勝を奪われると、拳を何度も地面にたたきつけた。
中学時代からGKとして頭角を表し、卒業時はガンバ大阪ユースにも誘われたが、高校サッカーを活躍の場に選んだ。小学生の時、鹿児島実業(鹿児島)のDFとして国立の舞台に立ったいとこの森井惟吉さん(27)への憧れからだった。京都橘を選んだのは、選手権初出場を決めた2008年の姿を見たから。「地元の強豪校で国立へ」との思いからだ。
「背番号1」を任されたのは、今大会が始まる直前。「ここまで導いてくれた先輩の分まで」と臨んだ。埼玉の強豪との初戦では相手のPKを止め、チームの目標だった「全国で1勝」に貢献。チームは強力なツートップばかりが注目されたが、準決勝では神奈川の強豪を無失点に封じ、守備の自信も深めていた。
この日は、試合開始直後にセットプレーで相手選手と接触。時間と共に右脇腹が痛んだが、「自分が盛り上げなければ」と声を張り上げ、好セーブを連発した。
あこがれだった森井さんからは「(高校3年時)準決勝で負けた自分よりも高い舞台で戦っている姿は誇りに思う」と認めてもらえたが、満足はしていない。「日本一のキーパーになるため、来年必ず戻ってきます」(今岡竜弥)
◇スポーツ特別奨励賞を贈る 府があす授賞式
府は京都橘の準優勝をたたえ、府スポーツ特別奨励賞を贈ることを決めた。21日に府庁で授賞式を開く。
山田知事は「最後まで諦めずにボールを追い続けた皆さんの勇姿は、府民に大きな感動と勇気を与えた。1年の始まりに、素晴らしいプレゼントをありがとう」との談話を寄せた。
【読売新聞】