雪のため延期となっていた決勝を行い、鵬翔(宮崎)が2―2からのPK戦を5―3で制して京都橘を振り切り、宮崎県勢として初優勝した。鵬翔は今大会4度のPK戦を制して頂点に立った。鵬翔は常にリードされる展開だったが、後半に芳川と矢野の得点で2度追い付き、PK戦では5人全員が成功した。京都橘の2トップ、仙頭と小屋松が通算5ゴールで並び、得点王に輝いた。
1週間分の喜びが凝縮されていた。110分では決着がつかず、迎えたPK戦。鵬翔の5人目、GK浅田が冷静に左隅に決めると、雪が解けた国立のピッチに鵬翔イレブンの笑顔が咲いた。
「最高ですね。勝因は気持ちの強さと、諦めなかったこと。最高の正月のお年玉。日々、精神的にも、技術的にも強くなるのが目に見えて分かった」。悲願の初優勝に松崎博美監督(62)は声を震わせた。
前半を1点ビハインドで終えると、早々と勝負手を打った。昨年12月に左膝を手術し、準決勝までの5試合は15分程度の出場だったエースの中浜を後半開始から投入。元日本代表のFW興梠(浦和)も背負った鵬翔のエースナンバー13の快速ドリブルで攻撃にリズムが生まれた。「最後だからケガのことも考えず思い切り行った」。その中浜のドリブル突破で後半4分にCKのチャンスをつかみDF芳川が頭で決めて同点。同19分に再び勝ち越されたが、矢野主将がPKを決めて同点に追い付いた。
PK戦直前には、矢野主将は円陣で「夏合宿の方がきつかったぞ!」と声を飛ばした。走り込みで戦い抜く体力をつけた鹿児島・志布志での夏合宿。関西遠征では関大などと練習試合を行い、実力では上の大学生を相手に磨いた精神力が発揮された。決めて当然、とプレッシャーがかかるPK戦。1人目のエース仙頭が外した京都橘に対して、鵬翔は5人全員が決めた。
創部30年目に果たした宮崎勢初優勝。過去11度のうち7度は初戦敗退だった鵬翔だが、今大会は貪欲に勝利だけを追い求めた。松崎監督は「通過点」と選手たちに言い聞かせ、練習後には「目指せ、国立!」と声を出させた。「宮崎県に優勝旗を持って帰るという約束を果たせて良かった」と矢野主将。強い思いはついに現実になった。