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【高校選手権】広島県代表、 広島観音「感謝胸に心で闘う」

30日に首都圏で開幕する第91回全国高校サッカー選手権大会(読売新聞社など後援)に、県代表として広島観音が出場する。昨冬の県大会決勝で山陽に敗れ、涙をのんでから1年。「心で闘うサッカー」を目指してきたチームは、3年ぶり4回目となる大舞台での活躍を誓う。(薮上遼介)

新チーム発足から間もない2011年12月末。部員たちは、東日本大震災の被災地・宮城県にいた。目的は、仮設住宅でのボランティアや、現地の小中学生や高校生とのサッカー交流。出木谷浩治監督(44)の「これから先、被災地に何をできるのか。自分たちで体験し、考えてほしい」という願いが込められていた。

現地では、がれき撤去や仮設住宅での大掃除を手伝ったほか、高校生チームとも対戦。そのチームは被災の影響でほとんど練習ができなくなり、試合は広島観音が2桁得点を挙げるなど優勢に進めた。しかし、相手チームは諦めずボールを追いかけ、終了間際に1点を奪われた。

被災地で抱いた率直な思いを、部員たちは練習などで感じたことを書くノートにつづった。「サッカーができることは、当たり前のことではない」「予想を超えていて、言葉も出なかった。自分のこれまでの考え方や心を見直さないといけない」――。「わずか3日間だが、人間として大きく成長した。それは、今のチームの礎になった」と、出木谷監督は振り返る。

優勝候補の一角に挙げられた選手権県大会。10月の初戦を1か月後に控えたチームに、重苦しいムードが流れた。出木谷監督が「技術面でも、精神面でもチームの柱」という主将の塚川孝輝選手(18)が右足を疲労骨折し、離脱を余儀なくされたからだ。

部員たちは、副主将のDF高橋純平選手(17)を中心に話し合った。そして、「『結束し、相手を上回るチーム力を出す』ことを確認した」(高橋選手)という。さらに「『一番、悔しくて苦しいのは塚川』『一緒に全国へ行く』という思いを共有する場にもなった」。選手たちは自らチームの原点に立ち返り、県大会を勝ち抜いた。

2013年1月2日、広島観音は浦和駒場スタジアム(さいたま市)で、初戦を迎える。相手は、福井県代表の丸岡。その舞台を思い浮かべながら、復調を目指す塚川主将は言う。「被災地でサッカーができることの幸せ、ありがたさを教えてもらった。一生懸命プレーし、感謝の気持ちを伝えたい」

【読売新聞】