川崎市立橘高校(神奈川県)
神奈川県川崎市中原区に所在する川崎市立橘高等学校のサッカー部。桐光学園や桐蔭学園、日大藤沢など全国屈指の強豪私学がひしめく神奈川県において、卓越した組織力とハードワークを武器に躍進を続ける「公立の雄」である。スポーツ科を擁する文武両道の教育環境のもと、高円宮杯神奈川県1部リーグ(K1)への昇格や関東大会進出など目覚ましい実績を残し、Jリーガーも輩出している注目校である。
目次
学校の設立と概要
川崎市立橘高等学校は、1942年(昭和17年)2月に開校した「川崎市立橘中学校(旧制中学校)」を前身とする公立高等学校である。戦前・戦中の激動期において、川崎市中原地区をはじめとする地域社会の発展と中等教育の拡充を求める市民の強い要望に応える形で設立された。戦後の1948年(昭和23年)における学制改革に伴い、新制高校として現在の「川崎市立橘高等学校」へと改称され、男女共学の市立高校として新たな歩みを進めることとなった。
創立以来、校訓である「自主自律」「剛健」「誠実」の精神を重んじ、知・徳・体の調和が取れた社会に貢献できる有為な人材の育成に力を注いできた。JR南武線向河原駅や東急東横線・JR各線が乗り入れる武蔵小杉駅に近接し、交通至便な都市型キャンパスに充実した教育施設を備えている。
設置学科には「普通科」「国際科」「スポーツ科」の3学科を擁し、普通科におけるきめ細かな進学指導、国際科における実践的な語学教育や国際理解教育、そして神奈川県内の公立校としては極めて希少なスポーツ科におけるトップアスリートおよびスポーツリーダーの育成など、特色ある教育カリキュラムを展開している。サッカー部のみならず、春高バレー常連の男女バレーボール部、陸上競技部、ダンス部など数多くの部活動が全国レベルで活躍し、学校全体がスポーツと学業のハイレベルな両立を実践している。
サッカー部創部の経緯
川崎市立橘高等学校サッカー部は、旧制川崎市立橘中学校の創立と同じ1942年(昭和17年)に創部された。創部以来、半世紀以上にわたって川崎市内および神奈川県内の高体連サッカー界を支える伝統校として着実に歩みを重ねてきた。
長らく県大会上位進出を目指す地域の実力校として活動を続けていたが、2010年代から2020年代にかけてチーム強化が本格化。全国制覇経験を持つ私学名門校が多数存在する激戦区・神奈川において、公立校ならではの工夫と一体感を武器に台頭した。恵まれた専用人工芝グラウンドや全国規模のスカウティング網を持つ私学に対し、選手個々の戦術眼、球際のデュエル、連動したアグレッシブなハードワークを徹底的に磨き上げ、互角以上に渡り合うチームへと急成長を遂げた。
近年の高円宮杯 JFA U-18サッカーリーグ神奈川においては、激しい昇格争いを勝ち抜いてトップカテゴリーである県1部リーグ(K1)への定着を果たすとともに、全国高校サッカー選手権大会神奈川県予選や全国高校総体(インターハイ)神奈川県予選においても県ベスト4やベスト8に名を連ねる常連校となった。さらに、関東高校サッカー大会神奈川県予選では準優勝を飾り、部史上初となる関東大会本戦出場を果たすなど、神奈川の高校サッカー界に新風を吹き込むトップ勢力として確固たる地位を築いている。
現監督と指導陣
- 森谷周平(もりやしゅうへい)(在籍期間:2021年〜在任中)
川崎市立橘高校教諭。公益財団法人日本サッカー協会公認A級コーチジェネラルを保持。神奈川県U-16トレセンセントラルヘッドコーチや川崎市トレセンスタッフなどを歴任し、地域・年代別の育成現場で豊富な指導実績を誇る。2021年の監督就任以降、「個の自立と状況判断」「アグレッシブな攻守のトランジション」をチームに浸透させ、部史上初となる関東大会本戦出場や高円宮杯K1リーグ昇格など、数々の歴史的快挙を達成した。選手一人ひとりの人間的成長と論理的な戦術指導を両立させる手腕が高く評価されている。
- 歴代指導陣(在籍期間:1942年〜2020年)
創部初期から昭和・平成期にわたり、情熱を持った教員指導者たちがバトンをつなぎ、地域に根差した指導体制を確立。技術指導のみならず規律と礼節を重んじる橘高校サッカー部の礎を築き上げた。
このほか、ゴールキーパー専任コーチ、フィジカル・メディカルトレーナー、外部サポートスタッフや熱心なOB会組織が連携し、公立校でありながら私学強豪に引けを取らない多角的な指導・育成環境が整えられている。
全国大会などでの成績
川崎市立橘高校サッカー部は、全国屈指の激戦区と呼ばれる神奈川県予選において、私学の全国常連校を脅かす存在として数々の名勝負を演じてきた。全国高校サッカー選手権大会神奈川県予選では、名門・桐光学園や日大藤沢、桐蔭学園などが立ちはだかる中、組織的な守備ブロックと鋭いショートカウンターを展開し、県ベスト4進出やベスト8進出を達成している。
全国高校総体(インターハイ)神奈川県予選においても、2022年度の県代表決定トーナメントで堂々の神奈川県第3位に輝くなど、幾度も全国切符にあと一歩と迫る戦いを見せてきた。また、関東高校サッカー大会神奈川県予選では強豪私学を次々と撃破して準優勝を果たし、チーム史上初となる県外公式大会(関東大会本戦)への出場権を獲得した。
高円宮杯 JFA U-18サッカーリーグ神奈川(Kリーグ)では、県内のトップチームが集う「K1リーグ(県1部)」への昇格を果たし、日常的にJクラブユースや強豪私学のAチームと高強度な公式戦を戦い抜いている。Bチーム、Cチームも各下部リーグで昇格争いを繰り広げており、部全体としての選手層の厚さと競技レベルの高さを示している。
全国高校サッカー選手権大会 神奈川県予選
| 年度 | 高校名(チーム名) | 大会名 | 成績・結果 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 2018年度 | 市立橘 | 全国高校サッカー選手権大会 神奈川県2次予選 | 2回戦敗退 | 優勝・桐光学園(神奈川) |
| 2019年度 | 市立橘 | 全国高校サッカー選手権大会 神奈川県2次予選 | 2回戦敗退 | 優勝・日大藤沢(神奈川) |
| 2020年度 | 市立橘 | 全国高校サッカー選手権大会 神奈川県2次予選 | ベスト8 | 優勝・桐光学園(神奈川) |
| 2021年度 | 市立橘 | 全国高校サッカー選手権大会 神奈川県2次予選 | 2回戦敗退 | 優勝・桐光学園(神奈川) |
| 2022年度 | 市立橘 | 全国高校サッカー選手権大会 神奈川県2次予選 | 2回戦敗退 | 優勝・日大藤沢(神奈川) |
| 2023年度 | 市立橘 | 全国高校サッカー選手権大会 神奈川県2次予選 | ベスト8 | 優勝・日大藤沢(神奈川) |
| 2024年度 | 市立橘 | 全国高校サッカー選手権大会 神奈川県2次予選 | ベスト8 | 優勝・東海大相模(神奈川) |
| 2025年度 | 市立橘 | 全国高校サッカー選手権大会 神奈川県2次予選 | ベスト4(神奈川県第3位) | 優勝・桐光学園(神奈川) |
全国高等学校総合体育大会(インターハイ) 神奈川県予選
| 年度 | 高校名(チーム名) | 大会名 | 成績・結果 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 2018年度 | 市立橘 | 全国高校総体 神奈川県2次予選 | 2回戦敗退 | 優勝・桐光学園(神奈川)と三浦学苑(神奈川)の両校代表 |
| 2019年度 | 市立橘 | 全国高校総体 神奈川県2次予選 | ベスト8 | 優勝・桐光学園(神奈川)と東海大相模(神奈川)の両校代表 |
| 2020年度 | 市立橘 | 全国高校総体 神奈川県予選 | 大会中止 | 新型コロナウイルス感染拡大の影響により大会中止 |
| 2021年度 | 市立橘 | 全国高校総体 神奈川県2次予選 | 3回戦敗退 | 優勝・相洋(神奈川)と桐光学園(神奈川)の両校代表 |
| 2022年度 | 市立橘 | 全国高校総体 神奈川県2次予選 | ベスト4(神奈川県第3位) | 優勝・日大藤沢(神奈川)と三浦学苑(神奈川)の両校代表 |
| 2023年度 | 市立橘 | 全国高校総体 神奈川県2次予選 | 2回戦敗退 | 優勝・桐光学園(神奈川)と日大藤沢(神奈川)の両校代表 |
| 2024年度 | 市立橘 | 全国高校総体 神奈川県2次予選 | 3回戦敗退 | 優勝・桐光学園(神奈川)と東海大相模(神奈川)の両校代表 |
| 2025年度 | 市立橘 | 全国高校総体 神奈川県2次予選 | ベスト4(神奈川県第3位) | 優勝・桐光学園(神奈川)と日大藤沢(神奈川)の両校代表 |
高円宮杯 JFA U-18サッカーリーグ神奈川(Kリーグ)
| 年度 | 高校名(チーム名) | 大会名 | 成績・結果 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 2019年度 | 市立橘 | 高円宮杯 JFA U-18サッカーリーグ神奈川 K2 | 5位 | K2リーグ残留 |
| 2020年度 | 市立橘 | 高円宮杯 JFA U-18サッカーリーグ神奈川 K2 | 限定開催 | 特別レギュレーションにて開催 |
| 2021年度 | 市立橘 | 高円宮杯 JFA U-18サッカーリーグ神奈川 K2 | 3位 | K2リーグ上位争いを展開 |
| 2022年度 | 市立橘 | 高円宮杯 JFA U-18サッカーリーグ神奈川 K2 | 2位 | この年度の成績をもってK1リーグへ昇格 |
| 2023年度 | 市立橘 | 高円宮杯 JFA U-18サッカーリーグ神奈川 K1 | 7位 | 最高峰K1リーグ残留 |
| 2024年度 | 市立橘 | 高円宮杯 JFA U-18サッカーリーグ神奈川 K1 | 6位 | K1リーグ残留 |
| 2025年度 | 市立橘 | 高円宮杯 JFA U-18サッカーリーグ神奈川 K1 | 5位 | K1リーグ残留/Bチーム・Cチームも各下部リーグへ昇格 |
関東高等学校サッカー大会 神奈川県予選・本戦
| 年度 | 高校名(チーム名) | 大会名 | 成績・結果 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 2022年度 | 市立橘 | 関東高校サッカー大会 神奈川県予選 | ベスト8 | 優勝・日大藤沢(神奈川) |
| 2023年度 | 市立橘 | 関東高校サッカー大会 神奈川県予選 | ベスト8 | 優勝・桐蔭学園(神奈川) |
| 2024年度 | 市立橘 | 関東高校サッカー大会 神奈川県予選 | ベスト4 | 優勝・日大藤沢(神奈川) |
| 2025年度 | 市立橘 | 関東高校サッカー大会 神奈川県予選 | 準優勝 | 部史上初の関東大会本戦出場権獲得 |
| 2025年度 | 市立橘 | 関東高等学校サッカー大会(本戦) | 1回戦敗退 | 初出場/1都7県の代表校によるトーナメント |
部員数
総部員数は約96名(3年生約32名、2年生約33名、1年生約31名)で構成されている。
カテゴリー構成・所属リーグ:
- Aチーム(トップチーム):高円宮杯 JFA U-18サッカーリーグ神奈川1部(K1)、全国高校総体予選、全国高校サッカー選手権予選、関東高校大会予選に参戦
- Bチーム:高円宮杯 JFA U-18サッカーリーグ神奈川3部(K3)に参戦
- Cチーム:高円宮杯 JFA U-18サッカーリーグ神奈川5部(K5)および川崎市ユースリーグに参戦
- U-16チーム:神奈川県U-16ユースリーグ、各種ルーキー研修リーグに参戦
部員の主な出身チームとしては、川崎フロンターレU-15、横浜FCジュニアユース、東急SレイエスFC、シュートJrユースFC、クラブテアトロ、SCH.FC、FC川崎CHAMP、エスペランサSCなどの神奈川・東京近郊の有力Jクラブ下部組織・タウンクラブをはじめ、川崎市立西中原中学校、川崎市立住吉中学校など地域の中学校サッカー部で主力を務めた実力者が集い、高い競争意識の中で互いを高め合っている。
練習環境については、校内のグラウンド(夜間照明完備)を日常のトレーニング拠点として使用するほか、等々力陸上競技場補助競技場や上平間サッカー場、丸子橋第一グラウンドなど川崎市内の人工芝・クレー施設を柔軟に活用している。活動日は火曜日から日曜日(月曜日は原則オフ)で、平日は放課後16:00〜19:00頃の集中トレーニング、土日・祝日は公式戦または強豪校・大学との練習試合という規律ある活動サイクルを確立している。
ユニフォーム
ユニフォームサプライヤーはATHLETA(アスレタ)を採用している。ファーストユニフォーム(HOME)は、橘高校のスクールカラーである伝統の「エンジ色(深紅)」を基調とし、シャツがエンジ色、パンツがエンジ色、ソックスがエンジ色の力強く品格ある組み合わせが特徴である。胸元には校名である「TACHIBANA」の英字ロゴとATHLETAロゴが刻まれている。セカンドユニフォーム(AWAY)は、クリーンな「白色」を基調とし、シャツが白色、パンツが白色、ソックスが白色のセットアップを採用している。GKユニフォームにはフィールドプレイヤーと明確に識別できるイエローやグリーン、サックスブルーなどのカラーが用意されている。
公立高等学校であるため、公式戦ユニフォームへの民間企業スポンサーロゴの掲出は規定により行われていないが、保護者会やサッカー部後援会(OB・OG会)による手厚い支援体制が敷かれており、遠征着やトレーニングウェア等の活動環境が整備されている。
寮・生活環境
川崎市立橘高等学校は公立高校であるため、学校直営の専用学生寮や寄宿舎は設置されていない。部員は基本的に自宅から公共交通機関や自転車を利用して通学している。
寮費や生活費に関する公的な規定設定は存在せず、遠方からの下宿を希望する場合の費用感については民間賃貸住宅の自己手配となるため公式には非公開となっている。
通学環境は極めて優れており、JR南武線「向河原駅」から徒歩約10分、東急東横線・目黒線およびJR各線が結節するビッグターミナル「武蔵小杉駅」からも徒歩約15分圏内に位置している。川崎市内全域はもちろん、横浜市や東京都内からもスムーズに通学できる利便性を備えている。早朝の自主練習や放課後のハードなトレーニング、夜間の学習時間を効率的に両立させる都市型高校ならではの生活リズムが確立されている。
入学・入部案内
セレクション・練習会は、例年夏期(7月中旬〜8月下旬頃)を中心に現中学3年生を対象とした部活動体験会・練習会が実施されている。学校公式ウェブサイトやサッカー部公式HP・SNSを通じて案内が行われ、本校サッカー部での活動や入学を希望する中学生が参加できる形式となっている。
入学後の入部資格に関しては、一般入試(学力検査)等を経て入学した一般入学生であってもサッカー部への入部は制度上可能である。ただし、神奈川県1部リーグ(K1)に所属し、全国大会出場を本気で目指すハイレベルな強化指定クラブであるため、日々の厳しい練習と競争をやり抜く強い意志と覚悟が求められる。
偏差値および設置コースの目安は以下の通りである。
- 普通科:偏差値目安 58(国公立・難関私立大学等への多様な進路実現を図る進学コース)
- 国際科:偏差値目安 54(高度な英語運用能力と国際感覚を養う専門学科)
- スポーツ科:偏差値目安 44〜47(実技検査を課し、トップアスリートやスポーツ指導者を育成する専門学科)
推薦入試の有無について、神奈川県の公立高校入試制度においては一律のスポーツ推薦枠は設けられていない。しかし、スポーツ科の入学者選抜において課される「特色検査(実技検査)」や面接・調査書において、中学校時代の実績や運動能力・適性が総合的に評価される選考枠組みが機能している。
※これらの情報は年度・情勢により変動するため、あくまで参考情報となります。最新かつ正確な情報は必ず学校・クラブ公式HPをご確認いただくか、直接お問い合わせください。
チーム強化・指導方針
川崎市立橘高校サッカー部の指導方針の根幹にあるのは、「凡事徹底」と「主体的判断に基づくアグレッシブなハードワーク」である。私立高校のように全国から特待生を集める環境ではないからこそ、日々の練習における細部へのこだわり、挨拶や清掃などの人間的成長を土台に据え、チーム全員が一丸となって泥臭く戦う組織力を追求している。
ピッチ上においては、強度の高いプレッシングと素早い攻守の切り替え(トランジション)をベースとしつつ、後方からのビルドアップや局面での的確な状況判断を融合させたトータルフットボールを展開する。相手の出方に応じてボールを保持するポゼッションと、背後のスペースを突く鋭いサイドアタックを柔軟に使い分ける戦術的フレキシビリティを重視している。
育成面においては、高校サッカーの3年間を通過点と捉え、大学サッカーやJリーグなどのトップステージでもリーダーシップを発揮できる人材の育成に注力。トップチームが最高峰のK1リーグで日常的に強豪私学やJユースと対峙することで、プロ基準のスピード感とインテンシティを体感させ、個の能力を最大限に引き出す強化サイクルを確立している。
主なプロ選手一覧
- 2018年度卒:新井直登(川崎市立橘高校 → 神奈川大学 → 松本山雅FC → FC刈谷 → Y.S.C.C.横浜)
※掲載基準:高校卒業後にJ1〜J3または日本フットボールリーグ(JFL)以上の国内プロ・トップリーグおよび海外プロクラブとの契約実績が確認できた選手を掲載。現役大学サッカー部所属選手およびアマチュア登録選手は除外している。



























